百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
紺の心臓
「!」
私は、言葉を失って声の主に目を奪われる。
そこには、藍色の髪の毛を風になびかせた一人の青年の姿があった。
その手には、銀色の鬼火銃。
「…九条…………!!」
周くんが、目を見開いて呟いた。
遊馬と雅も、その姿に釘付けになる。
私は、目を逸らすことが出来ずに遥をまっすぐ見つめた。
………は…
遥…………!
彼の名前を心の中で呼ぶと
胸につかえていた想いが、どっ、と溢れた。
「遥………!
どうして………どうして来たの………?」
ここに来たら、紺の思う壺…!
このままじゃ遥は、本来の妖力を取り戻した紺に殺されちゃう…!
私の声に遥は、ちらり、と私を見下ろした。
そして、小さく目を細めて口を開く。
「………どうしてって………。
お前を迎えに来たに決まってるだろ。」
「!」
どくん!と胸が鳴った。
……遥は、私を助けに来てくれた…?
自分の命が狙われているのに?
私は、ぐっ!と拳を握って、遥に叫んだ。
「ダメ、遥!早くここから逃げて!」