百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
その時
私の頭に、遊馬が狐の面をつけられた時の雅の言葉が蘇った。
“あのお面は、誤作動が起きて暴れ出しても
手に負えるように、力のないものだけを操り人形にするって言ってた!”
そうだ………!
あの狐の面は、面の力に侵食されて
自分をなくしてしまうことがあるんだ…!
まさか、あの妖も………?!
すると、次の瞬間。
暴れ狂った一匹の妖が私に向かって、ものすごいスピードで襲いかかってきた。
!
う………
嘘………っ!
私は、紺に光の縄で体を縛られていて
鬼火銃を撃つことができない。
………殺られる………!
「詠ちゃん!!」
周くんの緊迫したような声が聞こえた。
……っ!
ぎゅっ!と目をつぶった
その時だった。
遥と戦っていた紺が素早く私に向かって飛んできた。
えっ………?!
目を見開いた時
私に襲いかかる妖の体を、紺が鋭い爪で引き裂いた。
ズシャァァアッ!!
妖の血が、妖界の空に飛び散る。
……な………
なんで……………?!
紺が………私を庇った………?
その時、紺が引き裂いた妖の腕が
上空から落下してきた。
そして、私の数メートル先に落ちると同時に、その妖の爪が私の周りに貼られた紺の結界を引き裂く。
ぐわん!と揺れた結界に目を見開くと、紺が苦しそうに顔を歪めた。
………!