百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
心臓が、鈍く音を立てた。
離れていく温もりに私はなぜか胸騒ぎがする。
遥が、すっ、と顔を上げた。
澄んだ瞳をして、小さく口を開く。
「…紺の言うことなんて聞く必要ねぇぜ、狸のおっさん。」
!
周くんも、遊馬たちも驚いて目を見開いた。
芝狸もピクリと体を震わせて遥を見上げた。
遥は、私をちらり、と見て目を小さく細め、そして紺の方をまっすぐ見つめて口を開いた。
「そんな取引、成立するわけねぇだろ。
……俺が詠を選ばないとでも思ったのか?」
!
どっくん!
さらに大きく心臓が鳴った。
……ま…………
待って…………?
遥、一体、何をしようとしているの…?
その時
遥が、チャキ…、と紺に鬼火銃を向けた。
全てを察した周くんが、はっ!として遥に叫ぶ。
「九条、ダメだ!やめろ!!」
周くんの声が辺りに響いた瞬間。
遥は、鬼火銃の引き金を引いた。