百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
「“敵”って…何のこと……?」
私がそう呟いて、周くんが口を開こうとした
次の瞬間だった。
キーンコーン カーンコーン
予鈴を告げる鐘が鳴る。
………この大事な時に!!!!!
周くんは、少しの沈黙の後、にこ、と微笑んで言った。
「…予鈴だね。
続きは、放課後にしよう。また、芝さんの事務所に来てくれるかな?」
微笑んだ周くんに、少しほっ、として
私はこくん、と頷いた。
私は、後でね、と言って昇降口に入っていく周くんの後ろ姿を見つめる。
心が、きゅっ、と少し締め付けられた。
……あんな周くんの顔…初めて見た…。
いつも優しく笑っている周くんが、あんな冷たい顔をするなんて。
いや…、あれは冷たいっていうよりも…
“悲しい”…ような……。
私は、胸元の鬼火銃のネックレスを
ぎゅっ、と握った。
周くん。
私、周くんのこと、まだ全然知らない。
………放課後になったら…全部教えてくれるよね…?
私は、そう心の中で呟いて、昇降口へと入っていったのだった。