百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
私は、ぐっ!と体に力を込めた。
…そんな………
嘘だ…………
これは、夢だ。
悪い夢だ。
全部、全部、私の夢の中のこと。
その時
チャリ……、と私の手に“何か”が触れた。
視線を向けると、それは、粉々に砕け散った鬼火銃だった。
………!
全身の体温が下がっていく。
………夢じゃ…………ない。
どくん!と心臓が鈍く音を立てた。
…これは、すべて“現実”。
……遥は……
遥は、もうここには戻らない。
私は、ぐっ!と拳を握りしめて、雅に向かって叫んだ。
「ねぇ、雅!前みたいに鬼火銃を作ってよ!
それを使ってもう一度遥を迎えに行こう?」
雅は、悔しそうな顔をして小さく答える。
「…無理なんだよ、詠。
あれは、紺の力を借りて作った“偽物”。もし作れたとしても、本物じゃなければ“通行証”には使えない…!」