百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
「……は………る…………」
そこには、月の光に照らされる綺麗な藍色の髪の毛の青年の姿。
青年は、私を見つめて優しい笑みを浮かべて続けた。
「……なんてな。」
どきん!
彼の顔を見た瞬間
私の目に涙が溢れた。
次から次へと、こぼれ落ちる。
…私の瞳には、もう目の前の“彼”しか映らない。
この世界に、二人だけがいるような気がした。
遥は、窓枠に腰掛けると、ふっ、と笑って私に言った。
「………ほんっと、泣き虫だな。
ん、胸でも貸そうか?」
遥は、そう言って腕を広げる。
……っ!
私は、無意識に遥の胸に飛び込んでいた。
トッ!と、確かな感触が体を包む。
遥が、ぐらり、として、苦笑しながら口を開いた。
「…っと…!危ねぇ…っ!
…俺はもう空飛べねぇんだから、そう飛びつくなって。」
そう言いながら私を抱きしめる遥に、私は涙を流しながら言った。
「…本当…?…本当に、本物の遥?
ゆ……夢じゃないよね………!」