百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
私は、遥を見上げて口を開いた。
「周くんたちには会ったの?
雅も、すごく落ち込んでて…。」
すると、遥は小さく目を細めて私に答えた。
「雅や相楽とはここに来る前に会ったよ。……もちろん、周にも。
詠に会う前に、周には会わなきゃいけなかったからな。」
……え?
私はそれを聞いて、小さく目を見開いた。
……どういうこと……?
私が、?を浮かべていると、遥がそれを察したように笑みを浮かべた。
そして、少し照れたように私から視線を逸らし、ぼそ、と小さく呟いた。
「…周に詠のことを頼んだ手前、勝手に会いに行くわけにはいかないだろ?
…周から詠を奪う前に、周とちゃんと話しておかないとって思ってさ。」
………!
どきん!と、胸が高鳴った。
かぁっ!と顔が赤くなる。
……そ………
それって…………?
その時
遥が、くいっ、と私の顎を持ち上げた。
綺麗な顔が、目の前に近づく。
心臓が、速いペースで鳴り出した。
遥が、少し頬を赤らめて、にや、と笑う。
そして、ゆっくり距離を縮めながら、私に向かって囁いた。
「……詠。今から、お前を俺のもんにするけど……
………いいよな?」