百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
「……うん。
……大好き、遥……!」
遥が優しく微笑んで二人の唇が重なった。
それは、別れのキスよりもずっと甘く
ずっと、優しいキスだった。
……遥。
遥は、今まで、ずっと一人で苦しんできた。
心をボロボロにして、最愛の凛さんを失った悲しみを一人で背負って生きてきた。
……でも、これからは違う。
私が、側で支えるから。
凛さんにはなれなくても、私が、ずっと遥の側にいるから。
“運命の出会いがあります”
そう、告げられたあの時よりも前から
私たちは出会う運命だったんだ。
そっ、と唇が離れて、遥の瞳と目が合った。
お互い、顔を見合わせて笑い合う。
……私、遥に出会えて、良かったよ。
さぁっ、と優しい風が吹いて、どこからか飛んできた一枚の金色の桜の花びらが
夜空に瞬く星のように見えたのだった。
*第6章・完*