百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
私は、はぁ、と息を吐いて、その鳥居をくぐる。
一段一段と、階段を登っていく。
登るにつれて、私の心はどんどんわくわくしていった。
…どこか空気がひんやりしてきた気がする。
どきん、と胸が鳴る。
そして、最後の階段を登った瞬間
急に目の前が明るくなった。
「!」
すごい………!
そこは、この世とは思えなかった。
金色の光が、辺り一面に溢れている。
目の前には古い神社。
………初めて来た……。
金色の桜の大木が、ご神木のように生えている。
「きれー………。」
無意識に、声が出た。
私は、一歩ずつ神社に向かって歩いていく。
金色の世界に、ぽつん、と立つ私は、本当に夢の中にいるみたいだった。
……実は本当に夢だったりして……。
そんなことを考えて本堂の方を見ると、私はある違和感を感じた。
「…?これ……“狛犬”…?」
私の視線の先には、本堂へと続く道を挟むようにして、神社でよく見かける二体の石像があった。
しかし、その形は私の知っているものではない。
一方は丸い耳と瞳。そしてコロコロしたシルエットに、大きな尻尾、頭には葉っぱ。
もう一方は尖った耳と鼻。線のような細い目に、ふさふさの尻尾。
「これ…“狸”と“狐”…?」
私は、まじまじとその石像を見つめる。
なんで?
普通、狛犬は、二体とも犬だし…
お互い対になっているもんだよね?
……なんかこの神社…私が知っている神社とどこか違う…。