百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


心の中を見透かしたようにそう言った周くんに、私は動揺して答えた。


「ち……違うよ!

は…は……遥のことなんて、関係なくて…」


すると、遊馬と雅が目を細めて私を見た。


「なんだ、そーいうことか。

佐伯は九条と離れたくないんだな。」


「…ノロケなら他でやってくれない?

…結構ダメージでかいから。」


遊馬と雅が続けてそう言った。

私は動揺を隠せずに、あたふたする。


……そ……そりゃ…

遥と離れたくないっていうのが一番の理由だけど…!


「別に、ノロケてるわけじゃ……!」


私が必死に否定すると、周くんが、ぷはっ!と吹き出して私を見た。

そして、にこにこしながら口を開く。


「…詠ちゃんが幸せそうで良かった。

…ま、九条に飽きたらすぐに言ってね。いつでも、詠ちゃんを奪いに行くから。」


「…っ?!」


周くんの爆弾発言に、私はかぁっ!と赤くなる。


あ……周くん………?!

周くんって、こんな攻め攻めだったっけ?!


すると、私が動揺しているのを見た周くんが、おかしそうに、くすくす笑いだした。


……あ……周くんが、“遥化”してる!

遥みたいに、私をからかってるの?!


周くんは、私に向かって「ごめん、ごめん」と笑いながら謝ると

少し真剣な顔をして続けた。


「でも、言ったことは本心だから。

……覚えておいてね、詠ちゃん。」


っ!!


私は、ぼっ!と顔から火が出るように体温が急上昇した。

遊馬と雅は、私たちを見て笑っている。

事務所に、 元の日常が戻ってきたような明るい声が響いたのだった。

< 505 / 512 >

この作品をシェア

pagetop