百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
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「はぁ……、やっと帰ってきた……。」
ギシギシとおんぼろアパートの階段を登り、ガチャリ、と自分の部屋の扉を開ける。
時計はもう午後七時。
芝狸やみんなと話してたら、こんな時間になっちゃった。
…あれから、遥のことで散々質問攻めにされて、本当に疲れた……。
…付き合ってる、って言っても、前より全然会えてないんだから…
進展なんて、あるわけないじゃん…!
遥は、この世界に戻ってきてから本格的に受験勉強に入り、私の部屋に来る時間がぱったりとなくなった。
……朝、たまーに階段であったりするけど…
…最近、ゆっくり話せてなくて、寂しいな…
遥に会えていない一週間が、とても長く感じる。
…まぁ、考えててもしょうがないよね。
ご飯でも作って、気を紛らわせよう…。
と、そう思った時だった。
ブブブ…!
私のポケットに入っていたスマホが鳴る。
…電話…?
誰からだろう…?
すっ、とスマホを手に取ると、画面に表示されていたのは“遥”の文字だった。
っ!?
は…………遥?!