百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
一気に、心臓が鳴り出した。
え………え?
本当に、遥?
何の用だろう………?
私は、隣の部屋の壁を、ちらり、と見て、緊張しながら電話に答えた。
「も………もしもし?」
すると、スピーカーの向こうから、聞き慣れた少し低い声が聞こえた。
『……よぉ。今、部屋にいるか?』
どきん!
久しぶりに聞く声に、私はドキドキ、と胸が鳴る。
しかも、電話だと、耳元で遥の声が聞こえて、どこか意識してしまう。
「うん…!今、帰ってきたところだよ。
…どうしたの?電話なんて……。」
私が緊張しながらそう尋ねると、遥は、しぃん、と黙り込んでしまった。
……?
あれ?
まだ通話続いてるよね?
画面を耳から離してみると、まだ通話中だ。
……急に黙っちゃって、どうしたの?
「もしもし…遥………?」
私が不思議に思って語りかけると、スピーカーの向こうから少し掠れた小さな声が聞こえた。
『…………会いたい。
……今から、そっち行っていい?』
「………っ!!」