百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜

私が小さく名前を呼ぶと、遥は、小さく呟いた。


「………ちょっと休憩…。

……会わないの限界……詠不足。」


!!


どきどき、と心臓が音を立てる。


…ぜ……絶対、遥にも筒抜けだ…。

私の心臓の音…!


すると遥が、すっ、と私から少し離れた。

整った顔が、目の前に来る。

そして、私をまっすぐとらえながら、耳元に近づいて甘く囁いた。


「…久しぶりに会ったら、離したくねぇな」


「……!」


ど…………

どこで覚えたの、そんな言葉……!

心臓に悪すぎる……っ!


緊張で、何も言えなくなる私を見て、遥は、にやり、と笑って囁いた。


「今日のおひつじ座はキスすると運気が上がるらしいぜ。」


「…そ……そんなわけないでしょ!」


また、嘘ばっかり言って!!

き……キスで運気が上がるなんて、聞いたことない!


遥が、くすくすと笑いながら私を見つめる。


「んー?本当だぜ?

嘘だと思うなら、目ぇ閉じな。」


えっ?!


私は、目をぱちぱちさせて遥を見る。

う………

嘘だと思うならって………


絶対、キスするつもりでしょ!

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