百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


「遥……ふ…ふざけないでっ………」


私が腕から抜け出そうとすると、遥は一層強く私を抱きしめる。


「……いーから、目ぇ閉じてみな。

俺に任せれば大丈夫だから。」


な…っ!

何が“大丈夫”なの?!


…っ!


私は、半分諦めたような気分で、きゅっ、と目を閉じた。


…もう、どうにでもなれ…っ!


キスするのが嫌じゃない自分がいて、どこか複雑な気持ちになる。

遥が、小さく呼吸をするのが聞こえた。

真っ暗な中で、遥の気配だけを感じる。


……ま……

…まだ………?


私が、うっすら目を開けようとした

その時。

遥が、私の首筋に、噛み付くようなキスをした。


「っ!!!!!!!」


すぱんッ!


いい音が部屋の中に響いた。


「いってぇ…っ!!!」


私に平手打ちを食らった遥が、ぱっ!と私から離れて床に倒れこむ。


「何すんの!エロ男っ!

き……キスじゃなかったの?!」


私が真っ赤になって叫ぶと、遥は頬を押さえながら目を細めて答える。


「キスだろ?」


「あれはキスじゃないっ!!」


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