百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
もーっ!
離れていたせいで、すっかり忘れてた!
遥は、“こういう奴”なんだ!
いつも私をからかっては翻弄する。
……口づけされた首筋が熱い。
………遥のバカ……っ!
私がすくっ!と立ち上がって玄関の鍵を閉め部屋の中に入っていくと
遥も私を追ってカーペットに座り込んだ。
「ごめんって。
今度は、ちゃんと口にするから。」
「…また変なことするんでしょ。
……すっごい緊張したんだから!」
私がそう言い放って、ふい、と顔を背けると
遥はまるで耳を伏せた猫のように、しゅん、となる。
………。
そんな態度したって、無駄なんだから…。
………。
〜〜っ!
…まさか、本気で落ち込んでる?
私は、恐る恐る遥に近づく。
ちらり、と顔を見ると、伏せていて表情はよく見えない。
「遥……?」
私が、遥の近くにしゃがみ込んで、顔を覗き込もうとした
その時だった。
遥が、ぱしっ!と私の手を取った。
っ!
ゆっくりと、引き寄せられる。
────ちゅっ。
遥が、私の唇を盗むように塞いだ。
…!
驚いて目を見開くと、遥は、にや、と笑って口を開いた。
「…いただき。」
「───っ!」