百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
「────“遥”!」
その時、遠くから誰かの声が聞こえた。
ぱっ!と声の方を向くと、暗めの金色のロングヘアの人が、遥に向かって叫んでいる。
「竜ノ神の気配はない。
…今日はハズレ。早くこっちに来て!」
“ハズレ”……?
竜ノ神は姿を現さなかったの?
すると、遥はロングヘアの人に向かって答えた。
「雅は先に帰っててくれ。
……後始末をしてから行くから。」
“みやび”……?
名前で呼び合う仲なんだ?
…もしかして、カンパニーの仲間?
……まさか…彼女だったりして…。
その時、遥がふいに私に手を差し伸べた。
「立てるか?」
!
え………?
……どういうつもり?
妖を殺すなんて非情なことをしておいて
私のことを心配してるの?
すると、その時
差し伸べられた手を取る前に
私の体は、ふわっ、と宙に浮いた。
えっ…?
私が驚いて、ぱっ、と顔を上に上げると、綺麗な琥珀色の髪の毛が瞳に映った。
「…佐伯さんは僕たちのものだ。
……お前には渡さない。」