百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
私は、咄嗟に、周くんに抱き抱えられている状況を理解する。
っ!!!
こ……これは
“お姫様抱っこ”……!!
顔が一気に赤くなる。
しかし、周くんを見上げると、彼は冷たい瞳で遥を睨んでいた。
ツキ、と小さく心が痛む。
どうして……遥にはそんな顔をするの…?
「…………。」
二人は、数秒静かに対峙する。
周くんを見た遥は無言で目を細めると、崩壊した建物に目をやって、そしてケータイで誰かに連絡を取り始めた。
「…あぁ。…今夜中に元どおりにしといてくれ。
…お前なら、一時間ぐらいで直せるだろ?」
遥の後ろ姿を見つめていると、周くんが私を抱き抱えたまま、くるり、と遥に背を向けた。
「…竜ノ神も来てないようだから、事務所に戻ろうか。
壊れた建物は、あっちが直してくれるみたいだし。」
え……?
あ、そっか……。
竜ノ神がいないんじゃ、もう意味ないもんね
辺りを見回しても、ここにいた妖たちはみんな消えている。
……浄化したのか
それとも、さっきの遥の浄化で、みんな逃げちゃったのかな…。