百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
すると周くんは、はっ、としたような表情をして、そして少し俯いた。
ゆっくりと口を開く。
「…僕の姉も加護者だったんだけど…
去年、鬼火銃の使いすぎで倒れて、そのまま亡くなったんだ。」
…!
どくん、と胸が鈍く音を立てた。
……亡くなった?
鬼火銃の使いすぎで?
「…ご…ごめんなさい。私、嫌なことを思い出させちゃったよね。」
私の言葉に、周くんは微笑んで答えた。
「大丈夫。気にしないで。
……加護者は浄化の力も大きいけど、体力の消耗も大きい。本当に無理はしないで?」
優しくそう言った周くんに
私はただ、頷くことしかできなかった。
…まさか、お姉さんを亡くしていたなんて。
お姉さんも、この事務所の人だったのかな?
周くんは、お姉さんの後を継いで、この事務所に入っているとか?
たくさん聞きたいことがあったけど、また地雷を踏むのが怖くて、それからは何も言い出せなかった。
『じゃあ、次の浄化の日程は妖らの動きを見て、わしが決めておく。
お主らもここに来て準備しとくんじゃぞ!』
芝狸が事務所を見渡しながら言った言葉は、私に、ずしり、とのしかかった。
……“次”か……。
私は小さく息を吐いて、そして胸元に光るネックレスをぎゅっ、と握りしめる。
……遥の言ってた意味が、少し分かったかもしれない。
“妖の世界は、お前が思ってるほど簡単でも、優しくもねぇ。”
私は、小さく息を吐いて
窓から見える月を眺めたのだった。