百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜
私が驚いて口を開けていると、遥は少年を私に見せながら言った。
「こいつは“一心(いっしん)”。天狗の子どもで、俺の下僕だ。」
て……天狗?!
ってか、下僕って何?!
さらりと言い放った遥に、一心とかいう天狗くんは首を傾げながら口を開いた。
『遥さま??こちらの女性は??』
目をぱちぱちさせて私を見た一心に、遥は表情を変えずに答える。
「狸のおっさんの手下だよ。
こいつは危険な奴じゃないから大丈夫だ。」
“狸のおっさんの手下”って…。
私はバイトしてるだけなんだけど…。
すると、遥は一心のうちわを指差しながら言った。
「俺はこいつの力で、空を飛んで妖を浄化してんだよ。
地上から撃つよりも飛んだ方が仕留めやすいからな。」
私は、遥の言葉に眉をひそめた。
「あんた…こんな小さな子どもを下僕扱いして無理やり妖力を借りたり、パシリにしたりしてるの?」
すると、一心が私に、びゅん、と近づいて叫んだ。
「遥さまは僕の命の恩人なんです!
悪い人じゃないんですよ!!僕は恩返ししてるだけです。」