紅いワイン

「だが零くんの部屋には、赤ワインなど一本もありませんでした」

 珠里子が口に手を当てて、零を見た。

 そんな様子の珠里子に、御手洗は呆れた顔で「知らなかったのですか?」と問うと

「えぇ。基本的に、あたくしはこの子の部屋には入りませんから。お掃除は全てメイドたちに任せておりますし…」

「私たちも、気づきませんでしたわ」

 ふたりのメイドは涙ながらに頭を下げた。

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