居場所をください。
「さっき歌わせた部屋にいたんだけど
わかんないかなー?」
……………客の顔なんてわかんないし。
「あの、なんですか?」
「俺、芸能事務所で働いてるんだ。」
そう言って私に名刺を差し出した。
「……………はぁ…。」
「君、歌手にならない?」
「……………はい?」
「さっきの歌、すっごくよかったから!
俺の一目惚れ。その若さであの歌唱力。
どこかレッスンとか通ってるの?」
「いえ………。」
「じゃあ才能なのかな。
ね、どう?悪い話じゃないと思うけど。」
私なんかが?いやいや……ありえないでしょ。
詐欺か何か…?
「……………興味ないです。」
私は歩き出した。