居場所をください。
「貴也の母親、末期がんなんだ。」
「ガン?」
「見つかったときにはすでに手遅れだった。
手術はできなかった。
延命として、治療はあったみたいなんだけど
副作用が強くてな。効果はあるみたいなんだけど
リンパに転移していて、ガンは全身に転移するだろう。
骨にも転移していて強い痛みもあるんだ。」
「でも、前あったときは…」
「麻薬を使ってるんだ。
医療用麻薬。とても強力な鎮痛剤で
ガンの痛みにはかなり有効らしい。
だからそれで美鈴の前では元気に振る舞ったんだ。」
「だから急に会わせたのか。
おかしいと思った。」
じゃあギックリ腰も嘘だったってことか。
「余命半年だと宣告されている。
年は越せないだろうって。
だから貴也は芸能活動を休んで
最期に看病することを決めたんだ。」
「……………それで私に黙ってた理由は?」
「それが美鈴のためだと思ったからだな。」
「私のため?」
「俺は美鈴に言わないのかって聞いたんだ。
そしたらあいつ、長曽我部さんなら
わかってくれますよね。って言ったんだよ。
俺は美鈴に実の兄だと黙ってた。
それが美鈴のためだと思ったから。
最初に言えば俺についてこなかったかもしれない。
俺の顔なんか見たくなかったかもしれない。
言わずに連れ出して咲かせてやることが
美鈴のためだと思ったんだ。
だから言わなかった。
きっと貴也もそう思ったんだ。」
「……………どうして…。」
「それも、きっと美鈴は俺の妹だから。」
……………は?