居場所をください。
「長曽我部さん、ですよね?」
「そうだけど。」
高橋くんの話を聞いて
何も言えなくなった俺に
彼女が言った。
「美鈴って夜ほとんど食べないんです。
食べても低カロリーのものばかり。
なにもするにも一生懸命で
食べたら動いて歌って
喉のためにってしてることもたくさんあって
私、美鈴に"美鈴は仕事のために一生懸命で
えらいよね。"って言ったら美鈴、
"長曽我部さんに見捨てられたくないから"
って言ったんです。
美鈴はあなたのことを本当に大事に想ってます。
でも、歌手として完璧にやらなきゃ
あなたに見捨てられてると、どこかで思ってる。
美鈴は仕事もあなたのことも貴也くんのことも
全部大事にしてきました。
あなたも、美鈴のことを大事にしてください。
美鈴をもう孤独にしないでください。
やっと笑うようになったんです。
もう独りにさせないでください。」
二人の言ってることが的を射ていて
俺は何も言えなかった。
「……………俺いくね。
二人ともありがとう。」
俺は窓を閉めて逃げるように車を走らせた。
あの二人より俺の方が美鈴と過ごした時間は長いのに
美鈴のことを知ろうともしなかった俺が
情けなくて仕方なかった。