居場所をください。




「これ。」


「……………なにこれ。」


「貴也の住所。」


「……………いらないよ。

貴也の一番ほしいものってね

芸能人でもなんでもない

ただの松野貴也なの。

貴也には今だけでも一般人を味わってもらいたい。

私がいたら邪魔でしょ?

それに、私は歌手だもん。

会わなくても伝えられることはできるよ。

信じるって決めたから

私は貴也の決めたことに従うしかない。

16年間、そうやって生きてきたんだもん。

また頑張れるよ。」


「……………俺もいるしな?」


「はは、そうだね。」


「帰るか。」


「うん。」


美鈴は俺の腕をつかみ

一緒に車へ戻った。


「俺んちに帰るよ。」


「なんで?」


「マスコミがいるだろ。

美鈴、辛いだろ。」


「……………何も言えないしね。」


「落ち着くまで俺んちにいろ。」


「ありがと。

ねぇ、私は彼女のままだよね?」


「それは俺に聞くなよな。

フラれてねーんならそうだろうけど。」


「そっか、よかった。」


「美鈴はブログとかでなんか語んの?」


「私は私に出来ることをするまでだよ。」



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