居場所をください。
「ただいま~。」
さすが夏休み。
学生みんないる。靴がすごいわ。
「あ、美鈴!」
「美優ちゃん!うわー、久しぶり~!」
それは5歳上の美優ちゃん。
会うのは約5年ぶりだ。
「あんたが歌手になってるなんてねぇ…。」
「美優ちゃんも結婚するんでしょ?
いいなぁ。」
「美鈴、彼氏は?」
「さぁ?なんせ活動休止中なんで。」
「会ってないの?」
「会ってないよ。
帰ってくるのを待つって決めたから。
それよりママは?」
「たぶん、ご飯の片付けしてると思う。
美鈴上がりなよ。ママの部屋行く?」
「もちろん。」
私は靴を脱いでママの部屋へ向かった。
そのあとすぐママが来た。
「ごめんね、美鈴。」
「それはいいけどお腹すいた~。」
「え、ごめん。
もうないよ。」
「えぇ!ショック…。
なんか買ってくればよかった…。」
「ごめんねぇ。」
「いいよ。慣れてる。
それで、どうしたの?」
「あぁ、それがね
藍子のことなんだけど…」
「また藍子かぁ。
ママ、私が藍子のこと嫌いなの知ってるでしょ?」
「でも他に話せる人いないんだもの。
美鈴は同室だったし
同い年だしもうここにはいないから
相談するのにちょうどいいのよ。」
なんだそりゃ。
ちょうどいいのよ。って。
「……………仕方ないなぁ。
じゃあ聞いてあげよう。」
「ふふ、ありがと。
あのね、夏休みに入って
藍子ずっと帰ってこないのよ。」
「え、ずっと?」
「うん…。
この前たまたま見かけたんだけど
柄の悪い同い年くらいの子といたし
話しかけられなくて……………
その、見た目もあれだから
藍子が危ない人たちと一緒じゃないかって
ちょっと心配で…。」
「でも、藍子の交遊関係なら
和也の方が詳しいじゃん。」
「和也に聞いても知らないって言うし
そもそも不登校になったままだから
全然わからないみたい。」
「ふーん…。」
「変なことに巻き込まれなければいいけど…。」
「で、私に調べてほしいわけ?」
「さすがにあからさま過ぎた?
美鈴、人脈広いしさ…。」
「私じゃなくて長曽我部さんがね。
まぁ話はわかったよ。
とりあえず私お腹すいたから行くね。」
「うん、ごめんね。
急に呼び出して。」
「いーよ。美優ちゃんにも会えたし。
じゃあまた来るね。」
「美鈴、あなたもあんまり無理しちゃダメよ。」
「え?」
「そのぎこちない表情。」
「……………ママにはバレバレか。」
「私はあなたの母ですからね。」
「大丈夫。ありがとね。」