居場所をください。
「おい。」
お店を出てすぐ話しかけられた。
後ろを振り向けばそこには藍子の彼氏。
「なに?」
「忘れ物。」
そういう男の手には私のスマホ。
「あ、嘘。
ありがとー、助かった。」
私はスマホを受け取ってカバンへしまった。
「さっきは悪かったな。
殴ろうとして。」
「あぁ、全然いいよ。
私もごめんね。勝手に決めつけて。
勝手なこといってたのは私の方だったね。」
「別にいいよ。
俺に突っかかってくる女は始めてだったけどな。」
「少し彼氏に似てたの。
ああ言えばこういう。
人の名前は絶対呼ばない。
全体的に似てたから。」
「……………松野貴也?」
「そ。意外でしょ。
私も初めて会ったとき
なにこいつ!って思ったけどね。
あそこまでテレビと違うのは貴也くらいな気がする。」
「……………お前もそんな顔するんだな。」
「は?」
「優しそうな顔。
さっきまでずっと冷めてたけど。」
「あぁ…」
そうかな…。
貴也のこと考えたら無意識笑ってたかも…。