居場所をください。



「まぁあいつらはお互い必要にしてるって感じ。」


「……………実はね、私の彼氏

貴也のお母さんも病気なんだ。

もうすぐ死んじゃうの。」


「……………それ、言っていいわけ?」


「亜樹は誰かにいったりしないでしょ?」


「あぁ、まぁ…。」


「貴也は私の前から突然いなくなったけど

そういう事情を聞いてさ

少しだけ、私も荒れたりしたんだけど…

私のお母さんも病気で亡くなってるんだ。

だから、そうやって親のためになにかしてあげる

っていうことがスッゴク羨ましくて

応援することにしたの。

私は居場所もわかるし会いにも行けるけど

待ってようって決めたの。

会いに行ったら離れたくなくなるし

もし二人でいるとこ撮られたら

せっかく一般人になれそうな貴也を

またこっちに戻しちゃうことになるし

…それに、貴也はきっと

私に自分が母親といるところを

見せるのを悪いと思ってるから。

私がお母さんに会えないのを知ってるから

きっと気を使ってると思うから

その思いを裏切ることはできないしね。」


「……………お前さ、

彼氏の話するとき

すげー優しい顔もするけど

すげー寂しそうな顔もするんだな。」


「そりゃ寂しいからね。

それに、美鈴。」


「は?」


「私は美鈴。

名前で呼んでくれる?」


「……………俺に呼んでもらおうなんて

まだまだ早すぎだっつーの。」


なんだそれ。

照れてるだけでしょ、絶対。

クールなわりに可愛いとこあんじゃん。


「つーかタクシーまだかよ。」


そういって颯太の方へ歩き出す。




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