居場所をください。



それから私はなにも話さず

ただ二人の会話を聞いているだけだった。


「……………私、そろそろ行くね。」


「じゃ、俺らもでるよ。」


颯太は空気は読めるようで

あれから私に一切話しかけてこなかった。



私たちはお金を払って

お店を出た。


「じゃ、私こっちだから。」


「送る。」


そう言ったのは亜樹。


「え、でもすぐそこだよ?」


「いいだろ。」


ふーん、亜樹なりの優しさ?

話しかけてこなかった颯太は

颯太なりの優しさか。


「ありがと。」


といっても徒歩1分もかからない距離。


すぐそこにある会社に向かって歩き出す。



「あ、美鈴~。

今迎えいこうと思ってたとこ。」


顔をあげると

会社から出てくる長曽我部さん。


「長曽我部さん!」


相変わらず長曽我部さんに抱き付く私。


「くっつくなよ!あちーな!」


「ふふ、いいじゃーん。」


「……………友達?」


「あぁ、うん。

あの私が施設育ちって暴露した女いるじゃん。

その女の友達~。」


「なんであの女の友達が

美鈴の友達なわけ?」


「まぁいろいろあったわけです。

あの女も少し和解できた感じかな。」


「ふーん。」


「颯太と亜樹、

こっち、うちの鬼の長曽我部さん。」


「は?誰が鬼だって?」


「長曽我部さんしかいないじゃん!」


「俺はいつでも優しいだろ。

しかも美鈴には一段と。」


「一段と鬼の間違いでしょ。」


でも、長曽我部さんといるときが

今は一番楽しいし、落ち着く。



< 1,269 / 4,523 >

この作品をシェア

pagetop