居場所をください。
それから私はなにも話さず
ただ二人の会話を聞いているだけだった。
「……………私、そろそろ行くね。」
「じゃ、俺らもでるよ。」
颯太は空気は読めるようで
あれから私に一切話しかけてこなかった。
私たちはお金を払って
お店を出た。
「じゃ、私こっちだから。」
「送る。」
そう言ったのは亜樹。
「え、でもすぐそこだよ?」
「いいだろ。」
ふーん、亜樹なりの優しさ?
話しかけてこなかった颯太は
颯太なりの優しさか。
「ありがと。」
といっても徒歩1分もかからない距離。
すぐそこにある会社に向かって歩き出す。
「あ、美鈴~。
今迎えいこうと思ってたとこ。」
顔をあげると
会社から出てくる長曽我部さん。
「長曽我部さん!」
相変わらず長曽我部さんに抱き付く私。
「くっつくなよ!あちーな!」
「ふふ、いいじゃーん。」
「……………友達?」
「あぁ、うん。
あの私が施設育ちって暴露した女いるじゃん。
その女の友達~。」
「なんであの女の友達が
美鈴の友達なわけ?」
「まぁいろいろあったわけです。
あの女も少し和解できた感じかな。」
「ふーん。」
「颯太と亜樹、
こっち、うちの鬼の長曽我部さん。」
「は?誰が鬼だって?」
「長曽我部さんしかいないじゃん!」
「俺はいつでも優しいだろ。
しかも美鈴には一段と。」
「一段と鬼の間違いでしょ。」
でも、長曽我部さんといるときが
今は一番楽しいし、落ち着く。