居場所をください。
「私が中3のとき、色別対抗リレーで
私、小林くんからバトン受け取ったんだよ。」
「え! あ、そっか…あの時の…」
「まぁ記憶になくて当然だよ。
目立つ方じゃなかったしね。
今はスッピンだし、髪の毛もまとめてるから
あの頃の面影あるかもね?」
私もあれがなかったら
小林くんのこと知らなかったし。
「思い出しました。
すげー足の速い先輩がいたことは覚えてはいたんです。
あれ、美鈴ちゃんだったんですね…」
「小林くんの方が速いじゃん。」
「俺は男ですから。
あんなに足が速いのに
なんで陸上部入んなかったんですか?」
「当時の好きな人が陸上部だったから。」
「え!誰ですか!?」
「内緒~。
私、施設育ちバカにされてたし
近くにいれなくて、美術部だったの。
絵も好きだったし。」
「そうなんですか?」
「私はいじめられてたの。」
「……………美鈴ちゃんにも
そんな時代があったんですね。」
「そんな時代があったから
今の私がいるの。
あの頃は辛かったけど
今の私のためにあった時間なら
貴重な時間だったよ。」