居場所をください。



「よう、貴也。」


「今度は長曽我部さんか。

なんですか?」


「お前も懲りねーな。」


「俺も好きでこいつといるわけじゃないですから。」


「あっそ。まぁいいや。

亜樹行こう。美鈴が待ってる。」


「あぁ。」


ひかるくんはあえて松野貴也に聞こえるように言って

俺を連れて店を出た。


「あいつの親、病気?」


「……誰から聞いた?」


「松野貴也。」


「そ。

まぁそうだよ。

末期がん。もう動くのもしんどいはず。

あいつ一人で看病してるんだよ。」


「父親は?」


「昔亡くなった。」


「美鈴も知ってんの?」


「知ってる。」


「だから余計にあいつを待ってんのか。

美鈴が待ってねーと松野貴也は一人になるから。」


「美鈴はずっと一人だったからな。

お互いに、お互いのことを想い合った結果が、今なんだよ。」


……………だから寂しいって言わないようにしてたのか。



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