居場所をください。
あれ、もう長曽我部さんのマンションか。
はやいなー。近いんだ。
知らなかった。
「長曽我部さんって港区?」
「そうだけど。
今更なに。」
「私は?」
「はぁ?渋谷区。
そんなことも知らねーであそこ住んでたのかよ。」
「住所かいたことないもん。
タクシーだっていつも事務所の近くって言うし。」
「住所くらい覚えろ。」
「でも港区であのマンションって
やっぱりお金持ちなんだねぇ。」
「美鈴は渋谷区のわりには
お手頃マンションにすんでるよな。」
「長曽我部さんが決めたんでしょ。」
「でも、結局社長が払うんなら
もう少しいいとこでもよかったな。」
「あそこで十分。
事務所にも近いし、駅も歩いていけるし。」
「引っ越さねーの?」
「引っ越さないよ。」
少なくとも貴也が帰ってくるまでは。