居場所をください。
「いつも20代半ばくらいの人の写真
持ち歩いてたのも俺知ってたし。」
「……それで離婚?」
「たぶんな。
母さんだって仕事人間だから
それで父さんを責めたりしないだろ。」
「……………そっか。」
お母さんの写真、かな。
私がいなければ離婚なんかしなくて済んだのかな。
済んだよね、きっと…。
「でも恨んだりはしてねーけどな。
血も繋がってない俺を本当の息子みたいに
今でも良くしてくれてるし。
母さんもそこまで恨んでる様子はないしな。」
「ほんとに?」
「俺、離婚する直前まで反抗期だったからな。
血の繋がりがない父さんにすげー当たってたし
やっと大切さがわかったから。離れて気づいたってやつ。
ま、別に今でもけっこう会ってるし
金はねーけど不幸ではねーよ。」
「……すごいね。」
「なにが。」
「私なんか、親が私を捨てたことを恨んで
お金のない自分が嫌で自分がかわいそうだと思ってたから。
不幸だと思わないなんてすごいよ。」
私とは真逆だね。
「……俺は捨てられてねーから。
お前とはちげーよ。」
「……そんなことないよ。
私も捨てられてなかった。
ちゃんと愛されてた。」
「じゃあなんで今ひとり暮らしなわけ?」
「一緒に住むことはできないから。
他人として、たまに会うことしかできないから。」
「それはそれで辛いな。」
……なんだ、けっこういいやつじゃん。