居場所をください。



あそこを曲がればすぐマンション。

前通るくらいすりゃいいのに。


そう思っていた矢先、

俺の少し前を歩く貴也が

いきなり止まった。


「なに、どうしたんだよ。」


「……。」


なんだよ。

……って、視線は思いっきりマンションの方を向いてて

俺もその視線を追った。


「……え、美鈴?」


貴也の視線の先には

噂をしたばかりのハルってやつと美鈴。

しかもあのダンサー、美鈴を抱き締めてる。


かと思えば向き合って、美鈴は男に笑いかけてて……


何を話してるのかは聞こえねーけど

遠くからでもなんとなく

あの二人の仲の良さはわかった気がした。



そしてすぐ、美鈴はマンションに入り、

あのダンサーはこっちへ歩いてきてて

すぐ俺らに気がついた。


「あー…」


気まず。


「……盗み見?」


「……………俺の女なんですけど。」


「知ってるけど?」


「なら手だしてんなよ。」


「……………美鈴ちゃんが俺のこと拒否してるように見えた?」


いや……どちらかといえば

受け入れているというか……

抱き締められたあとの美鈴は

気まずさはなかったよな。

少なくとも俺がコクったときとは

全く違っていた。


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