居場所をください。
で、きたのはお馴染みの焼肉屋。
「はー、お腹すいた~。」
「はいはい。」
そしていつも通り、
高橋が肉を焼いてくれる。
「俺さー、やっぱ
夏音と友達なんの無理だわー。」
「なんで?」
「今日めっちゃテレビ出ててさ、
なんつーか…別人。怖い。
ああやって愛想振り撒けば芸能人なれんのかって。
俺ああいうの無理。」
「嫉妬とかじゃなくて?」
「そういうのじゃなくて、本気で。
ってか俺もう好きじゃねーし。
アイドルだからそうなのかもしれねーけど
美鈴がデビューまで頑張ってたの知ってるし
芸能界ってあんなんでデビューできるんだなって。
歌下手だし。」
「……………まぁでもかわいいじゃん。」
「可愛いだけじゃな。
美鈴はどうやってまた夏音と友達になんの?
もう別人だろ。」
「テレビの中では別人でも
本当のところは違うかもしれないじゃん。
そんなこと言ったら私だって別人だし。」
「前の夏音はあんな男タブらかすような
そんな態度とったりしなかったろ。」
「仕方ないじゃん、仕事なんだから。
私だってよく思うよ。
こんな偽ってばっかりの自分が
そっちの世界からどうやっで見えてるのかなって。
ずっと偽ったままがいやで
誰か連れ出してくれないかなって思ったりもするけど
立ち止まってしまうのも怖くて
結局走り続けるしかないんだなって。」