居場所をください。
「……受験生かぁ。」
「え、まぁ。
美鈴はいいよなー、そういうのなくて。
俺なんか頭悪いから
一高で目の敵にされてるわ。」
「はは、それは言い過ぎでしょ。」
「まぁそうだけど。」
「いいな、受験生か。
最近そういうのが羨ましくなるよ。
まだ子供で、自由で。
私が選んで歌手やってるけど
自由なんてなくてさ
テレビの中で自分を偽って
どこか出掛けても結局見られて
写真とられて、話しかけられて
あー私はもう普通に暮らすことはできないのかって
ちょっと今の自分が嫌になってくる。
かといってやめたところで
結局五十嵐美鈴はやめることができなくて……
芸能界って憧れる人多いけど
一般人を犠牲にするのは
なかなか辛いことなんだなって思うんだよね。
休みの日にも声かけられるのは正直辛い。
毎日毎日自分を偽ってる。」
こうやって、偽ることに抵抗を感じてる間はまだいい。
これが当たり前になって、偽ることに
なんの抵抗も感じなくなったら
自分がなくなってしまったら
私はもう本当に終わりだ。人として。