居場所をください。



「CD1つすら、満足に売ることができない。

いつもどれだけの人が私のために

動いてくれてるのかわかったよ。


そしてそれを買ってくれる人たち。


私はやっぱり

歌を歌うことしかできないんだって思い知った。


だからやっぱりこの勝負

少しは意味があったのかもしれない。」


いろんなものに気づけた。

失いたくないものが私にはたくさんある。


私を失いたくないと思ってくれている人がいる。



それがわかっただけで

私は十分。



「君も聴いてみたらいい。

美鈴の新曲を。

きっとなにか感じるはずだよ。」


佐藤さんはそういって

新しいSecretを差し出し、

夏音は静かにそれを受け取った。


「美鈴ちゃんはまだいいたいことあるんじゃないの?」


「……………ううん。いい。

きっと今言ってもなにも伝わらない。」


時に言葉はとても無力になる。


それなら私は言葉が有力になったときに

夏音に伝えるよ。


私は夏音を失いたくないって。



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