居場所をください。
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「で、私は辞めずに済んでるんだよね?」
「うん、もちろん。」
結局私は時間となり、佐藤さんと
いつもの倉庫へと向かっている。
「でも、あのSecret
きっと長曽我部さんの方が
心に響いてると思うよ。」
「そうかな?」
「うん。
長曽我部さんも思ってるよ。
あの人は社長になるより
ずっと美鈴ちゃんをプロデュースしていたいって。」
「はは、そっかぁ。
まさに勝ち組だね、あの人は。」
社長室はこのビルの最上階だもんなぁ…。
「でも、結局夏音は
なにがしたかったのかよくわかんないや。
あれだけしかCDが売れてなかったって。」
「あの子は基本的に夢見すぎなんだよ。
金を稼ぐ大変さをわかっていない子供。
親に言えば金が出てくる温室育ちの子に
この世界は過酷すぎるよ。」
「前に長曽我部さんが
夏音は純粋すぎるから向いてない
って言ってたんだよね。」
「あの子は純粋すぎるね、確かに。
真っ白なんじゃなくて、まだなんにも染まってない
透き通った状態。
だから悪い方向にも染まりやすい。
自分がないんだよ。」
「私は?」
「美鈴ちゃんはちゃんと自分があるでしょ。
この世界のやり方に負けない芯がある。
だから大丈夫だよ。
長曽我部さんが見つけてきたくらいだし。」
この世界のやり方に染まらない、か。