居場所をください。
で、ひとつのドアの前で父さんは止まった。
「この中はすげーうるさくて
ここのドアを開けると一気に音が漏れるから
あけたらすぐに入れよ。
じゃねーと苦情が来るから。」
そう言った父さんにいろいろ聞きたかったけど
聞く暇なんかなくドアを開けたから
俺はすぐに中に入った。
「うるさ…。」
外の静けさは嘘みたいだ。
「で、こっち。」
中にはもうひとつドアがあって
そこを開けるとさらにうるさい。
「なに…。」
「今美鈴待ち。
ちょい座って待ってて。」
美鈴待ちって……またあいついんのかよ。
父さんについてって椅子に座ると
父さんよりも若い男がお茶をくれた。
「美鈴ちゃんならあそこ。」
いや、俺は別に美鈴が見たい訳じゃねーんだけど……
とりあえずステージらしき物に目を向けると
確かに美鈴と一人の男が踊っている。
……………で、俺はこれを見ながら待ってろと。
あんまり美鈴の歌とか知らねーしなー。
ライブの練習なのはわかるけど
俺がこれを見てても面白くはない。