居場所をください。



「じゃあこれあげる。」


「……美鈴のCDですか。」


「そ、話題の新曲。

よかったら聴いてね。」


俺に宣伝か。


「今回は珍しく

本音をオブラートに包んでないから。」


「オブラート?」


……………よくわかんねーけど…。


「聴いてみりゃわかるよ。」


今度は父さんがそうやって

ヘッドホンを俺に渡してくるけど


「まぁその曲の良さは

普段の美鈴を見ていないやつにはわかんねーかもだけど。」


……………なら聴かせんなよ。


「美鈴の友達が最近デビューしてな。

美鈴に勝負を挑んだんだ。

新曲が同じ発売日だから

負けた方が消えるってな。

その友達ってのが美鈴にとって

すげー大事な友達で、美鈴は

友達を失いたくなくて負けることにした。

だから美鈴は負けるために、

400枚しか新曲を作らなかった。

わざとな。

だから売上は当然美鈴が下。

美鈴が負けたんだけど

400枚しか作らなかった新曲の初回版は

価値が羽上がるだろ。

で、その通常版には美鈴の本音が隠されてる。


こんなクソみたいな世界に

君はどうか来ないで、っていう

友達を思ったメッセージが詰まってるよ。


表面だけさらっと聴いてもわからない、

美鈴の本音が。」


……………ふーん。



「聴きたくなったろ。」


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