居場所をください。
速い、ロック調の曲。
「聴き終わったろ。」
静かになったヘッドホンをつけたままいると
父さんが俺からヘッドホンを取った。
「……………最後の、曲名は?」
「Secret。」
「だからこのCDは
Secretって名前なわけね。」
「そ。
一見、その勝負を挑んできた友達を
挑発したような歌なんだけど
本当はそれ、
君をこんな世界の犠牲者にしたくない
って思いが詰められてるんだよ。
だから"君じゃなくて私が歩く道"
芸能界の犠牲者になるのは
美鈴だけでいいって気持ちが込められてるんだよ。
歌手としてステージに立つより、
一般人として、芸能界に憧れをもって
友達と遊んでいる方が楽しいから
ずっと楽しいからって。
もう一般人に戻れない美鈴が
一般人をまだ取り戻せる友達に宛てた本音。
すげー友達思いだろ。」
「…………でも、1曲目と言ってること
少し矛盾してね?
美鈴が勝てばその友達は
芸能界やめる約束だったんだろ?」
「美鈴は伝えたかったんだろ。
そんな勝負をしてまで
ここにいる必要はないって。
本気でここにいたいなら
そんな勝負必要ないんだって。
友達がここにいることを今は望んでるから
それなら美鈴は敗けを選ぶ。
だけど本当はこの世界の犠牲者にしたくない。
そんな美鈴の葛藤が
このCDに詰められてるんだよ。」
ふーん…。