居場所をください。



「どう。

美鈴の良さがわかったろ。」


「少しはな。」


「少しかよ。

まぁいいけど。」


父さんはそういって

拡声器を持って立ち上がった。


「おーい、お前ら。

もう10時になるから終われよー。」


美鈴の想いね。

ふーん。


「これ、もらっていいんですか?」


「うん、いいよ。」


美鈴のマネージャーは微笑んで俺に答えた。

きっとこの人も美鈴の歌が好きなんだな。


しばらくして倉庫内は静になり、

気がつけばステージには誰もいなくなっていた。


父さんが戻ってくる前に

俺は美鈴のCDをカバンにしまった。


「弘希、もうすぐ美鈴が戻ってくるから、

帰る支度しとけよ。」


「支度とかねーし。」


来たままだわ。



< 2,348 / 4,523 >

この作品をシェア

pagetop