居場所をください。
「ところでさー」
「なに?」
「あの車の匂い、どうすんの?」
「お前が言うなよな。
今日クリーニング出してくるわ。」
「はは、あの匂いはすげーもんな。」
「だから弘希が言えたことかよ。」
「悪い悪い。」
あんな車じゃ確かに俺もあんま乗りたくない。
少しならいいけど匂いがきつすぎて。
「さてと、帰るわ。」
「おう、行こう。」
「あ、ちょい待って。
書き置きするわ。
いきなりいなくなったら不安なるだろ。」
……………どこまでも気がつく男だな。
さすが俺の息子、と喜んでいいのか微妙だけど。
"学校行くし帰るわ。"とだけメモを書き、
俺らはこそこそと美鈴の部屋を出た。