居場所をください。
「あぁ、美鈴か。」
そのメールの差出人は美鈴。
歌詞が送られてきた。
とりあえず1曲分。
"wandering"……………
放浪……さまよう、ってところか……。
その歌詞は美鈴の本音なのか
美鈴が不眠症と知ったばかりだからか
この歌詞が俺にはグサッときた。
「はぁーー…」
もう深いため息が出てしまう。
「美鈴の歌詞ですか?」
それに気づいた佐藤が
パソコンを覗いてきた。
「そ。
俺あいつの本音とか、限界とか
ちゃんとわかってねーなーと思って。」
「でもそれはお互い様ですよ。
大切な人ほど、心の底は見えにくいし、
辛いときに辛いって伝えられないもんじゃないですか。
こいつだって、結局美鈴には
直接伝えることができなかったわけですし
そんなもんですって。」
……そうかもだけど。
美鈴の不調に最初に気づいたのが
佐藤っていうのがなんか情けない。
「美鈴、どうかしたんですか?」
「貴也が美鈴の事聞いてくるのさえ懐かしい。」
「真面目に聞いてるんすけど。」
「過度のストレスと緊張と疲労で不眠症。
でももうかなりよくなったらしい。
薬なしでも寝てるっぽいし。」
「そうなんですね。」
俺がそういうと
貴也は明らかにホッとした顔をした。