居場所をください。



「おい、ハル。

そろそろ行くぞ。」


「うぇー!!!」


「うるさっ。」


陽くんなんてちょっとうんざりした顔をして

クールに突っ立ってる。


バンドメンバーさんや他のスタッフさん、

佐藤さんまでもが先に東京へ帰った中

わちゃわちゃした私たち(特にハル)を

長曽我部さんが一人でまとめている。


これではまるで修学旅行だ。

10代は私とハルだけなのに、

みんな本当に学生気分。


陽くんですら食べてるからね、たこ焼き。


たっつんと莉子ちゃんはあっちにいるし

ユリ姉と瞬はあっちだし

ハルは相変わらずたこ焼きだし

長曽我部さんは私から離れられずで

散らかったダンサーをまとめるのも

人苦労なようです。

亜美ちゃんだけだよ、しっかりしてるの。

この人は酒さえ入らなければ…ね。


「あ、美鈴ちゃん!」


「え?」


ハルの声で振り返るも

ハルは私の方なんかみていなくて

ハルの視線の先を見ると、大きなモニターに私。


「あぁ、新曲のCM。」


初めて見たや。


「あのMVも綺麗だよねー」


あのMVも完全にシンデレラ意識。

私の足にぴったりハマる、

片足分しかないガラスの靴。


怖くて履いて立つことは出来なかったけど

どうしても使いたかったから。



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