居場所をください。
「ところで岳人となに話してたの?」
「別に大したことは話してない。
夏はダルいって話。」
「なにそれ。くだらないなぁ。」
「あとは来年W杯だな、とか。」
「へー。男子だね。」
「美鈴は?あの颯太とかいうやつと
なに話してたんだよ。」
「進路の話とか。」
「真面目だな、随分。」
「………颯太にね、羨ましいって言われたよ。」
「なにが?」
「将来も決まってて、
いろいろ掴んで、手に入れてて。
芸能界で売れて、彼氏もできて
お金もあって、かな?
それにいろいろ期待されてて、だって。
颯太の家はお母さんが事故で亡くなってて
お父さんは国際線機長のパイロット。
颯太の家はお金持ちなんだよ。
颯太は親に進路についてなにも言われないけど
なんにも期待されないのも辛いって
キャラにもないこと言ってた。
だけどその気持ちはすごくわかるから
なんにも言えなかったんだよね。」
「まぁ人間なんて無い物ねだり
し続ける生き物だからな。
結局他人が良く見えるものだろ。」
「そうだけどさ。」