居場所をください。
「俺からしてみたらあいつらの方が
よっぽど羨ましいけどな。
期待されてて、って言われても
それが重荷になることだってあるし
仕事は他のやつらより早く決まった分
いろいろな制限も出てくる。
なにより、俺らが失ったものを
あいつらはまだ持ってるから
俺はそれが羨ましくて仕方ねーけどな。」
「失ったもの?」
「自由と友達。」
「自由と友達、か…」
「芸能界に入って、失った友達って
絶対一人や二人はいるだろ。
隼也も、地元の友達はみんな芸能人扱い
してきたんだと。
俺もそういうの無理だから。
俺を自慢したいだけのやつらはいらねーし。
………美鈴も、ほんとはそうなんじゃねーの?
吉田夏音。」
「え、どうして…」
「カラオケでの話、少し聞こえた。
それに顔合わせの後の美鈴とあいつ見てて
なんとなく。
あいつ言ってた。
美鈴は下積みなしで売れてすごい、
簡単にトップとれちゃうんだろうな、って。
あいつ、スクール生だったんだろ?
そうやって下積み生活送ってきても
花開かないやつなんてたくさんいる。
あいつもその中の一人なんだろ?
なんつーか、言い方がバカにしてたから
こいつらなんかあったのかなのは思ってた。」
「………まぁ、ね。
ずっと歌手になりたかったんだって。
ずっとスクール通ってて、
だけど高校上がる前に
長曽我部さんに切られたみたいで
その数ヵ月後に私と出会って
私は2年前の6月に長曽我部さんに拾われて
2月にデビュー。
夏音がずっと好きだった貴也とも
あっさり仲良くなって、付き合って
そうやって築き上げてく私が
本当に嫌みたい。」