居場所をください。



「………でも、美鈴だって

たくさん手に入れた分

たくさんの物を失ったろ。

……違うか。

今までたくさんの物を諦めてきた。

美鈴にないものをあいつらは

たくさん持ってるのにな。


そうやって無い物ねだりをして

いつだって自分が一番でいたがる。


そういう競争社会が嫌になる。

完全実力社会なここを選んだら

失うものなんてたくさんあるよな。」


「……前にね、長曽我部さんに

美鈴もたくさんのものを犠牲にして

ここにいることを選んだんだろって言われて

私そこで初めて気づいたんだよね。

あー、私っていろんな物を失ったんだって。

そこに気づいちゃったから

実は私も颯太たちが羨ましくなるときがある。


……だからね、できれば

夏音はこの世界に入ってほしくなかった。

こんな自由のない、偽りばかりのの世界に

なんの希望を持って来たんだろうって。

あの時、切られたときに諦めてれば

きっといろんな選択肢があったのになって。


私は思いっきり喧嘩を売られたけど

私は私の居場所を譲るつもりはない。

私はここにしか、居場所がないから。」


「俺と別れる気も?」


「ないに決まってるでしょ。」


なぜ、今それを言ったんだ。



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