居場所をください。
「夏音にはこんな過酷な世界入らなくても
見守ってくれてる人がいたのにな。」
私にはここしかなかった。
私はここに来てたくさんの物を手に入れた。
失うものがなにもなかった。
でも夏音は違ったのに。
「………あのさ、なんで美鈴は
そんなにあの女にこだわんの?
大嫌いとまで言われたんだろ?」
「夏音がいなければ今の私はいないから。」
私は迷うことなく、貴也に答えた。
「私には長曽我部さんがいて、貴也がいて
隼也がいて、高橋に朔也、ママ。
たくさんの人がいるけど
私に友達になりたいとぶつかってきたのは夏音だった。
夏音と仲良くなって、初めて
誰かを守りたいと思った。力になりたいと思った。
あの頃の私には夏音しかいなかった。
感情をなくして仮面をはりつけた私に
感情を芽生えさせたのは夏音だった。
散々冷めてるって言われてきたけど
夏音に対してだけはそんなことなかった。
高橋とか、朔也とか隼也とかとは違う感情が
夏音にはあるの。
初めて本当の友達ができたと思ったのに
こんなことで壊れるなんて
その方が信じたくない。
友達ってそんなもんじゃないでしょ?」
「………そうだな。」