居場所をください。
あと少し…あと少し…
「美鈴、下見てろ。
足元を見てるといつの間にか着くから。」
足元ね。はいはい。
「その方が転んだりつまづいたりしないしな。」
……それにしても
この人はなんでこんな余裕に喋られるんだ?
私なんて返事をすることすらできないのに。
……あと少し、あと少し……
それだけを頭の中でリピートして
自分の足元だけを見つめて歩き続けた。
「ふぅ、到着。」
長曽我部さんのその声に
私は前を見た。
それから私も最後の一段を登り、
無事、富士山のてっぺんについた。
「ふぅー…ついたー!」
「な、登れたろ。」
「かなり疲れたけどね。
挫折しそうだったよ。」
かなりきつかった。
たぶん、一人なら挫折してた。
……その前に、登ろうとも考えなかった。
長曽我部さんがいたから。