居場所をください。



「……………ここ?」


「うん、ここ。

永田さんも来て。」


私たちが来たのは私が育った施設。

出ていったあの日から、

ずっとここには来ていなかった。

だからすごく久しぶりなんだ。


「こんにちは。」


誰もいない玄関に挨拶をする。


しばらくして近づいてくる足音。


「美鈴!久しぶりね!」


「ママ、久しぶり。

こちら永田さん。私のマネージャーさんだよ。」


とりあえず紹介してから

ママに促され、私たちは中へ入った。


「ママ、これ。

できたてほやほやの私のCD。

出来たら必ずママに渡そうと思ってたの。」


「ありがとう。

本当に歌手になるのねぇ…。」


「うん、私も信じられないよ。」


「前より痩せてるけどちゃんと食べてる?」


「うん。忙しいけど、ちゃんと食べてるよ。」


「そう、よかった。

これ、聴いてみてもいい?」


「あ、うん。聴いて聴いて。

永田さんも私の歌聴いたことないの。

ね?やっと聴けるね。」


「そうだな。」


私たちは出来立てのCDを聴いた。

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